コンピュータという、超がつくほどの高級な計算機を使っていながら、単純な四則演算しかできないような電卓を使いたくなることはよくあること。何を隠そう筆者も、パソコンのディスプレイ──しかもExcelを起動したディスプレイ──に向かいつつ、100円ショップで買った電卓を使うことが多い。単なる足し算、引き算をするだけなら、Excelはおろか、Windowsの「電卓」ソフトでさえ、事務機器の電卓の手軽さには敵わない。しかし、「コピって計算」ならば、もしかすると電卓優位の状況を覆せるかもしれない。なにしろ数値をクリップボードにコピーするだけで、自動的に計算が行われるからだ。場合によっては【Ctrl】+【C】キーだけで必要な数値を自動的に得ることができる。
もちろん、どのような場合でもそれが成り立つわけではないし、合計や平均といった「コピって計算」が対応する計算だけで常に事足りるわけでもない。とはいえ、本当に何もしなくても自動的に数値を計算してくれるのは──実際に使ってみればわかるが──実に快適だ。
この快適さは、普段は隠れていても、【Shift】キーを押すだけで表示されるという「奥ゆかしさ」と、打てば響く「即応性」が寄与するところが大きいだろう。この邪魔にならなさ加減は、常にスタートアップで起動していてもよいとさえ思わせる。仮に注文をつけるとしても、せいぜい「表示された際に視線を奪いすぎないよう、ウィンドウの表示色を設定できると便利かもしれない」くらいだろう。
ソフトウェアに真に必要なのは、やはりアイデアなのだ。
(天野 司)