西洋絵画風のグラフィックが美しく、BGMもすぐれた一本道のノベルゲーム。ミシェルが開いていたという設定のサイト「ロワイヨムヘブン」を実際に用意し、登場人物には同作者の別作品「ファタモルガーナの館」のキャラクタを採用しているなど、Web連動とメタファンタジーの要素も盛り込まれた、短編ながらも凝った作りの作品だ(「ファタモルガーナの館」とは完全に別作品なので、そちらをプレイしなくとも楽しめるが、双方をプレイすることで各キャラに対する愛着はさらに増すだろう)。
出だしにはギャグっぽいCGや痛いやり取りもあり、自作パロディの意味合いも含めたコミカルな作品かと思ったが、プレイを続けるうちにどんどんと作品世界の中に引き込まれた。異世界「セブンスコート」での場面と、「ミシェル」「ジゼル」「IMEON」の三人によって紡がれてゆく「ある制作者の人生」とが交互に描かれる演出も憎い。ミシェルとジゼルの関係がどうなってゆくのかが気になり、途中で読むのを止められなくなってしまった。
もちろん「セブンスコート」での物語もよくできていておもしろい。序盤から中盤近くまではそうでもないが、後半はどんでん返しに次ぐどんでん返しの連続で、先が気になってしまい、一気に読み終えてしまった。
一部血生臭い描写もあるので、そういうのが苦手な方にはお勧めし難いが、そうでない方には間違いなく強力にお勧めできるノベルゲームだ。
(秋山 俊)